

2024年(令和6年)1月より、マンションの相続税評価方法が大きく変わりました。いわゆる「タワマン節税」への規制ですが、実務の現場では「固定資産税も高いのに、相続税まで二重に補正されるのか?」という切実な疑問を多くいただきます。
実は、高層階になればなるほど、その影響は「建物」と「土地」で異なる形で現れます。今回は、相続専門の税理士の視点から、その正確な仕組みを整理して解説します。
まず大前提として、建物の相続税評価額は、原則として市町村が決定する「固定資産税評価額」をそのまま使用します。 この仕組みこそが、高層階において「二重の重み」を生む原因となっています。
「高層階であること」という要素が、ベースとなる評価額(固定資産税)と、その後の補正率(相続税)の両方に反映されるため、建物の評価額は以前に比べて格段に膨らみやすくなっています。
土地(敷地権)については、建物とは少し状況が異なります。
つまり、土地に関しては建物のようなベース部分での補正はないため、厳密な意味での「二重補正」ではありません。しかし、固定資産税の段階では存在しなかった「階層による評価の差」が、相続税の計算段階で初めて加味されることになるため、高層階ほど土地の評価額が急上昇したように感じられるのです。
今回導入された「区分所有補正率」による評価の見直しは、いわゆるタワーマンション(高層階)だけに適用されるものではありません。低層マンションや一般的な分譲マンションであっても、市場価格と評価額に乖離がある場合にはこのルールの対象となります。「うちはタワマンではないから関係ない」と過信せず、全ての分譲マンションオーナー様において確認が必要です。
国税庁の調査(平成30年分)によると、マンションの相続税評価額と市場実勢価格には平均で「約2.34倍」もの乖離があることが判明しました。
建物評価のベースとなる固定資産税の階層補正(2017年導入)だけでは、この大きな乖離を埋めるには不十分であると判断されたことが、今回の改正の背景にあります。この新ルールは、評価額を「実勢価格の6割」まで底上げすることを目的として設計されています。
「心情的に納得がいかない」というお声も耳にしますが、実務上、この補正を恣意的に適用しないことは「極めて高いリスク」を伴います。
ルールを無視するのではなく、そのルールの中で「小規模宅地等の特例」や、以下で紹介する減額規定などをいかに確実に適用し、法的に認められた範囲で税負担を軽減できるかを検討することが、プロフェッショナルとしての正しいアプローチです。
今回の新ルールによって評価額が押し上げられる一方で、マンションの土地評価において忘れてはならないのが「地積規模の大きな宅地の評価」という別の減額規定です。
マンションの敷地全体は非常に広大であるため、多くの物件がこの規定の対象となる可能性があります。
土地の評価額が上がることばかりに目を向けるのではなく、こうした既存の減額規定を漏れなく適用できるかどうかが、相続税額を大きく左右します。
マンションの相続税評価は、今や「固定資産税評価額を見ればわかる」という単純なものではなくなりました。特にタワーマンションを所有されている方は、一度正確なシミュレーションを行い、ご自身の物件が現在どのような評価水準にあるのかを把握しておくことを強くお勧めします。
当事務所では、最新の改正に基づいた具体的な試算と、それに基づいた最適な相続戦略のご提案を行っております。
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