タワマン相続税評価の「二重補正」とは?

鎌田相続税理士事務所|立川相続行政書士事務所

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相続税「マンション新評価」は固定資産税と二重の負担になるのか?

2024年(令和6年)1月より、マンションの相続税評価方法が大きく変わりました。いわゆる「タワマン節税」への規制ですが、実務の現場では「固定資産税も高いのに、相続税まで二重に補正されるのか?」という切実な疑問を多くいただきます。


実は、高層階になればなるほど、その影響は「建物」と「土地」で異なる形で現れます。今回は、相続専門の税理士の視点から、その正確な仕組みを整理して解説します。


1. 【建物】の評価:二段階の「アップ」が重なる構造

まず大前提として、建物の相続税評価額は、原則として市町村が決定する「固定資産税評価額」をそのまま使用します。 この仕組みこそが、高層階において「二重の重み」を生む原因となっています。

  • 一段階目(固定資産税): 2017年の改正により、高さ60m超のマンションは「高層階ほど固定資産税評価額が高くなる」仕組み(階層別専有床面積補正率)が導入されています。つまり、相続税計算のスタート地点となる評価額自体が、すでに高層階プレミアムを反映して高く設定されています。
  • 二段階目(相続税): 令和6年からの新ルールでは、その「すでに高くなっている評価額」に対し、さらに「所在階」などの指数を用いた「区分所有補正率」を掛け合わせます。

「高層階であること」という要素が、ベースとなる評価額(固定資産税)と、その後の補正率(相続税)の両方に反映されるため、建物の評価額は以前に比べて格段に膨らみやすくなっています。


2. 【土地】の評価:相続税の段階で初めて「階層の差」が生まれる

土地(敷地権)については、建物とは少し状況が異なります。

  • 固定資産税では階数に関わらず一定: 土地の固定資産税評価額は、マンション全体の土地評価額を専有面積の割合で按分するだけです。そのため、1階でも50階でも、面積が同じなら評価額に差はありません。
  • 相続税で「階層差」が発生: 新ルールの「区分所有補正率」は、建物だけでなく土地にも同じ倍率で乗じられます。

つまり、土地に関しては建物のようなベース部分での補正はないため、厳密な意味での「二重補正」ではありません。しかし、固定資産税の段階では存在しなかった「階層による評価の差」が、相続税の計算段階で初めて加味されることになるため、高層階ほど土地の評価額が急上昇したように感じられるのです。


【重要な注意点】タワーマンション以外も対象です

今回導入された「区分所有補正率」による評価の見直しは、いわゆるタワーマンション(高層階)だけに適用されるものではありません。低層マンションや一般的な分譲マンションであっても、市場価格と評価額に乖離がある場合にはこのルールの対象となります。「うちはタワマンではないから関係ない」と過信せず、全ての分譲マンションオーナー様において確認が必要です。


なぜ、このような「厳しいルール」になったのか?

国税庁の調査(平成30年分)によると、マンションの相続税評価額と市場実勢価格には平均で「約2.34倍」もの乖離があることが判明しました。


建物評価のベースとなる固定資産税の階層補正(2017年導入)だけでは、この大きな乖離を埋めるには不十分であると判断されたことが、今回の改正の背景にあります。この新ルールは、評価額を「実勢価格の6割」まで底上げすることを目的として設計されています。


【よくある質問】「二重課税」だから適用しない、という選択は可能か?

「心情的に納得がいかない」というお声も耳にしますが、実務上、この補正を恣意的に適用しないことは「極めて高いリスク」を伴います。

  • 法的義務: このルールは国税庁の「財産評価基本通達」に正式に組み込まれたものであり、申告の際はこれに従う義務があります。
  • 税務調査のリスク: 新ルールの未適用は「過少申告」として確実に指摘の対象となります。その場合、本税だけでなく、過少申告加算税や延滞税といったペナルティが課されます。

ルールを無視するのではなく、そのルールの中で「小規模宅地等の特例」や、以下で紹介する減額規定などをいかに確実に適用し、法的に認められた範囲で税負担を軽減できるかを検討することが、プロフェッショナルとしての正しいアプローチです。


見落とせない減額のチャンス:地積規模の大きな宅地の評価

今回の新ルールによって評価額が押し上げられる一方で、マンションの土地評価において忘れてはならないのが「地積規模の大きな宅地の評価」という別の減額規定です。


マンションの敷地全体は非常に広大であるため、多くの物件がこの規定の対象となる可能性があります。

  • 適用の可能性: 三大都市圏で500u以上、それ以外の地域で1,000u以上の地積があり、指定の要件を満たす場合、土地の評価額を大きく下げることができます。
  • 新ルールとの関係: 今回の「区分所有補正率」による増税分を、この特例を適用することで一定程度相殺できるケースも少なくありません。

土地の評価額が上がることばかりに目を向けるのではなく、こうした既存の減額規定を漏れなく適用できるかどうかが、相続税額を大きく左右します。


鎌田相続税理士事務所からのアドバイス

マンションの相続税評価は、今や「固定資産税評価額を見ればわかる」という単純なものではなくなりました。特にタワーマンションを所有されている方は、一度正確なシミュレーションを行い、ご自身の物件が現在どのような評価水準にあるのかを把握しておくことを強くお勧めします。


当事務所では、最新の改正に基づいた具体的な試算と、それに基づいた最適な相続戦略のご提案を行っております。

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