税務調査でなぜ趣味を聞かれるのか?
被相続人が非常に真面目だった方で、趣味にお金を浪費することもなく節約して汗水たらしてコツコツお金をためて結局楽しまずに亡くなってしまったというお話を伺うことがあります。
そういうお話を伺うと、大事な相続財産から余計な税金を納めさせることが無いように頑張ろうと私は思います。
しかし、相続税の観点からすると、被相続人の方が真面目で趣味が無かったことというのは不利になることが多いです。
金融機関への入手金明細の確認
税務署は、被相続人の過去10年分の金融機関の入出金明細を取り寄せています。
これは、税務署に「質問調査権」という権限があるために可能であることです。
金融機関も、法律上税務署の質問に回答する義務があるのです。
したがって、金融機関は顧客に対して入出金明細を発行する場合は1か月あたり200円から300円程度(金融機関によって異なります)、10年分では24,000円以上の発行手数料を請求しますが、税務署に対して回答する場合には、送料を除いて無料で調査、印刷、封入、郵送しなければなりません。用紙が大量になり、送料も返信用封筒の切手で不足する場合には、改めて税務署に請求しなければならず、税務署への回答の事務コストが相当かかっており、改善のための意見交換会議も開催されているほどです。
そのため、1口座24,000円も負担しなけばならない納税者は税務署よりも不利な立場に置かれていますが、それでもやはり入出金明細を入手しておかないと、税務署から出金の内容について質問されても、本当に「わからない」と回答して良いのかどうかもわからない状態になってしまいます。貸付や名義預金など相続財産になるようなもので、相続人に関連するようなものであった場合に、「わからない」と回答してしまえば、虚偽の回答をしたことになり、40%の重加算税が課せられる可能性も発生するためです。
税務調査への対応
その中で、被相続人の入出金明細から不明な出金が多額に発見された場合、それが、旅行やギャンブルなどの財産が残らない趣味に費消されたことが説明できれば、相続財産や贈与財産とは認められず、納税者にとって有利に働きます。
したがって、税務調査の初日午前中の質問の中では、被相続人が決して生真面目な性格ではなく浪費型の人間であったかを印象付けることが重要です。
亡くなった方の悪口を言うようで憚られるかもしれませんが、そこは、「あなたが残してくれた財産を税金から守るためなので許してください」と、天国の被相続人に説明しておきましょう。
税務調査の初日午前中の質問の中で、「被相続人の趣味は特にありませんでした」と回答したにも関わらず、午後になって、出金内容について質問された段階で「それは海外旅行に使ったんだと思います」と回答しても説得力が亡くなってしまいます。
- 出金内容は調査前の段階で回答できるようにしておくこと。
- 調査の対象にならないように申告の段階で説明書きを付しておくこと。
- 被相続人がお金を浪費する性格だったことを印象付けておくこと。
以上が重要です。
書面添付
税理士に申告代理を依頼するのでしたら、税理士法33条の2の「書面添付」をしてくれる税理士に依頼するのが無難です。
「書面添付」で被相続人の性格や出金内容についても説明しておくことができ、仮に調査の対象になってしまっても、調査の事前通知前の税理士からの意見聴取により、税理士に代わりに説明してもらえれば、調査省略となる可能性が高いからです。