遺言が無効の場合どうする?
かなりのご高齢の場合や、病気の容体が悪化してしまい形式上完全な遺言が作成することができないまま亡くなってしまうケースも多くあります。
形式不備の遺言が、遺言者の本当の意思が記載されていたとしても、まったく意味がないのでしょうか?
遺言書としては無効であっても、「死因贈与」として有効になる場合がありえます(東京地裁昭和56年8月3日判例)
死因贈与が認められるためには、「贈与者」の死亡によって効力を生じる贈与のことを言います。
死因贈与が認められるためには、「贈与者(被相続人)と受贈者の間に贈与することの合意があること」が必要になります。
遺言の場合には遺言者(被相続人)の「一方的な意思表示があればよいのに対し、死因贈与の場合人には、遺贈者(被相続人)と受贈者との間に合意があることが必要な点が異なります。したがって、形式不備の遺言が必ず死因贈与として認められるということではなく、合意が認められる場合のみ有効になります。
合意は、明示であっても黙示であっても認められますが、贈与者(被相続人)が、受贈者の依頼や関与の下に遺言書を作成し、贈与者(被相続人)自らが遺言書を受贈者に交付し、あるいは保管を委託していたというような事情がある場合には、そのような経緯の中で受贈者も内容を知り、合意することができなければ合意しないという意思表示をすることが可能であるため、合意の存在が認められやすいといえます。
ただし、死因贈与として有効になる場合であっても、死因贈与が認められると法務局や金融機関に説明するだけでは、登記や預金払い戻しには応じてもらえません。
実際の手続きでは、訴訟を提起し勝訴の判決を得たうえで、登記や預金払い戻しを請求することになります。
実際には、訴訟提起前の段階で他の相続人との間で和解や遺産分割協議が成立して解決させるケースも多いです。