
相談者
母が自宅の敷地を所有していて、母にもしものことがあった場合に相続税を払えるかが心配なんです。
税理士
同居であれば小規模宅地等の特例が適用でき、80%評価減できるかもしれません。
相談者
自宅の敷地は300uあるんですが小規模宅地等の特例なんて適用できるんですか?
税理士
小規模宅地等の特例のうち、「居住用宅地等」の限度面積は330uです。
相談者
それは良かったです!それにしても、330uだと100坪で小規模宅地と言うには結構広いですよね。
税理士
そうですね。昭和50年に出された個別通達「事業又は居住の用に供されていた宅地の評価について」では限度面積が200uでしたが、その個別通達が引き継がれ昭和58年に小規模宅地等の特例が創設され、その後平成13年に240u、平成27年に330uと拡大していきました。
相談者
創設当初は200uが限度面積で確かに小規模でしたね。都市部では50uくらいの敷地に3階建の一戸建てが建っていることも多いから、200uでも十分広いですけどね。
税理士
それが今では限度面積が330uまで広がり、三大都市圏での広大地や地積規模の大きな宅地の500uにだいぶ近づいているということになります。
相談者
もはや、「小規模宅地」というタイトルを変えた方が良いですね。
税理士
そうですね。限度面積要件を満たす宅地等という意味で小規模宅地等と省略されているんですが、そのおかげで、とにかく「小規模住宅用地」であれば特例を使えると、多くの納税者が誤解しているように見受けられます。
固定資産税の「小規模住宅用地」の限度面積が200uで、「小規模住宅用地」に該当していれば、「小規模宅地等の特例」も適用できると誤解されていると思われます。
相談者
確かに紛らわしいですね。限度面積要件以外の要件にはどのようなものがあるんですか?
税理士
小規模宅地等の特例には、「特定事業用宅地等」、「特定居住用宅地等」、「貸付事業用宅地等」などがありますが、この特例のすべてに共通している要件は、建物または構築物の敷地の用に供されている宅地等、であるということです。
相談者
建物は父の所有なんですが、敷地の上の建物の所有者は被相続人以外だと適用できないのでしょうか。
税理士
母親が相続した土地の上に父親が家を建てるというのはよくある話ですが、直接的には建物の所有者に関する要件はありません。詳しくは、「建物が子供名義だと小規模宅地等の特例が使えない?」の動画で解説していますのでぜひご視聴ください。
相談者
それは良かったです!安心しました!
税理士
でも、将来的に敷地を売却した場合の譲渡所得では、土地と建物の所有者が同一でないと、マイホーム特例では敷地については特例が適用できず、空き家特例では建物も敷地も特例が適用できなくなってしまいますので、対策を検討しておく必要がありますね。
相談者
それはとても心配です。ぜひ検討させていただきたいと思います。
税理士
そうですね。マイホーム特例や空き家特例については、また別の機会に説明させていただきたいと思います。
小規模宅地等の特例に話を戻すと、この特例の中で、もっとも利用する方が多いのが「居住用宅地等」のうちの「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」の区分です。
相談者
うちの自宅の敷地も該当することになりそうですね。
税理士
はい。感覚的には相続税申告件数のだいたい3件に1件くらいはこちらに該当していると思います。
なので、「被相続人の居住の用に供されていた宅地等」の区分の要件について説明すると、一次的には、配偶者もしくは同居親族が相続等により取得する必要があります。
そして配偶者もしくは同居親族がいない場合には、いわゆる「家なき親族」が取得した場合にも対象になります。
相談者
とりあえず、私も同居しているので適用できそうです!
税理士
ええ。ただし、配偶者以外が敷地を取得した場合、さらに相続税申告期限まで保有を継続する必要があります。
相談者
相続税納税のために自宅不動産を売却する場合、売買契約の時点で保有が終了するということになってしまいますか?
税理士
いいえ。不動産の引渡しのときに保有が終了することになります。
相談者
そうすると、先に売買契約を済ませておいて申告期限の翌日に、不動産の引渡しと同時に売却代金を受け取って相続税を納税すれば、延滞税がかからずに済みますか?
税理士
まあ税額1500万円くらいまでなら期限の翌日でも延滞税は切り捨てになりますが、同居の親族が敷地を取得した場合、さらに居住も申告期限まで継続する必要があります。
相談者
さすがに申告期限まで居住を継続して、その翌日に引渡しは無理がありますね。
税理士
そうですね。家屋を解体せずに売却する場合であれば、申告期限前に売買契約を完了後、少しずつ中を整理しながら申告期限翌日に引っ越して、数日後に引渡しを完了することも可能かもしれませんが、不測の事態が起こって納税が遅れてしまうと、納税期限後50日以内に督促状が送られてきて、その10日後には財産の差し押えが入る可能性があるので、申告期限までに延納申請をしておいたほうが良いですね。
相談者
そうなんですね。ところで、うちの自宅の路線価は平米単価が30万円らしいんですが、自宅の敷地にかかる相続税はいくらくらいでしょうか?
税理士
相続税の計算過程には基礎控除や累進税率があるので、不動産単独での税額というものは計算できないんです。お母様には他に預貯金等の財産はありますか?
相談者
ほとんどありません。
税理士
そうしたら、30万円×300u=9000万円から、相続人2人の場合、基礎控除額4200万円をマイナスすると課税遺産総額が4800万円で、小規模宅地等の特例適用前の相続税の総額が620万円くらいですね。
相談者
小規模宅地等の特例を適用するとどのくらい下がりますか?
税理士
9000万円の80%減で1800万円が課税遺産総額となり、基礎控除額以下なので相続税はゼロになりますね。
相談者
それなら、相続税のために自宅不動産を売却する必要が無くなって、特例の要件を満たすことができそうです!特例を適用するにはどのような手続きが必要になりますか?
税理士
相続税の申告書に、「小規模宅地等についての課税価格の計算明細書」や遺産分割協議書の写しなど一定の書類を添付する必要があります。
相談者
そうすると、相続税がゼロ円になっても相続税申告は必要になるということなんですね。
税理士
はい。相続税申告期限までに遺産分割協議を完了し、相続税申告書を提出するようにしてください。詳しくは、「期限後申告で小規模宅地等の特例は使えない?」の動画で解説していますのでぜひご視聴ください。
相談者
わかりました。自宅の敷地にかかる相続税のことが不安で眠れない日が続いてたんですが、不安が解消されて良かったです。
税理士
お役に立てて大変光栄です。
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