
日本の課税方式は、もともとアメリカやイギリスのように「遺産課税方式」が採られていましたが、昭和25年に「遺産取得課税方式」に改められ、昭和33年には遺産取得課税方式を基礎とした「法定相続分課税方式」を採用して、今日に至っています。
遺産取得課税方式には「相続人間の税負担の公平を保てる」というメリットがあります。一方で、偽装した遺産分割によって相続税を少なくすることも可能という、課税側にとってはデメリットもあります。そこで、両方カバー出来る方法を模索した結果、遺産取得課税方式の建前を基礎とした「法定相続分課税方式」が採られるようになりました。この結果、遺産分割の方法によって相続税の総額が違ってくる点を、回避することができるようになりました。
法定相続分課税方式は、まず、@被相続人の遺産を各相続人の法定相続分で取得したと仮定し、各人が取得する遺産額から各人の相続税を累進課税税率により計算します。そして、A各人の相続税額を合算することで、その被相続人の遺産全体に対する「相続税の総額」を求めます。次に、B相続税の総額を、各人の課税価格(実際の遺産分割)の割合で、各人が負担する税額を算出します。
簡単な計算の流れとしては、以下のとおりです。
@法定相続分で各人の相続税計算⇒A合算し相続税総額計算⇒B各人の実際の課税価格で分配
この方式だと、同じ遺産総額、同じ法定相続人の数の相続においては、どのように遺産分割しても「相続税の総額」は変わらないため課税の公平が保たれます。また実際に相続した財産に応じて各人の相続税が累進課税で計算されるので、各相続人の公平が保つことができます。
一方、同じ法定相続人でも、異なる遺産総額の相続の場合には、遺産分割の結果、同じ金額を相続することになっても負担する相続税額も違うことになります。
たとえば、1億円を相続するという事実は変わらなくても、遺産総額によって、負担する相続税の額が全く違います。したがって、1億円を相続した相続人の相続額がいくらになるのかという相談に対して、それだけでは、簡単に「〇百万円です」と答えることはできません。
また、最終的に各人が負担する相続税額は、各人の課税価格により計算されるため、小規模宅地等の特例や保険料の非課税枠等の評価が減額される財産を相続する場合は、同等の価値を相続した他の相続人よりも負担する相続税額が少なくなります。
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