なぜ司法書士無料紹介サイトが無いのか?

司法書士は不当誘致に関して具体的に、業務をあっせんされた場合にあっせん料を紹介会社等に支払うことが禁止されています。
あっせん料を支払うためには、クライアントから報酬を多めに受け取らなければ元が取れないからです。
クライアントの方は自分が司法書士に支払った報酬に、仲介業者に支払われるあっせん料が含まれていることなど全く分からないわけです。
これを司法書士が行うと懲戒処分が下されるらしいです。
見積書にきちんとあっせん料が明示されていれば、クライアントもあっせん料を認識することができ、こんなあっせん料まで払いたくないよ、と依頼を取りやめることができるので、懲戒対象にはならないでしょう。
司法書士紹介サイトがあるとすると、クライアントに対しては「無料で司法書士を紹介します」と言って集客し、司法書士がクライアントに対して、「あっせん料も請求させていただきます」と申し出てしまうと、クライアントも「そんなの払えない」と紹介サイトを使わないで司法書士を探すことができるわけです。

税理士の場合も不当誘致禁止の規定はあるのですが、あっせん料の支払いの禁止にまでは踏み込んでいないため、税理士紹介サイトが横行しています。
税理士紹介サイトでは「無料で税理士を紹介します」とうたわれていますが、税理士に対していくらあっせん料が支払われるかは明示されていません。税理士からもあっせん料をもらわないと紹介業者も成立しないということは、経済原理上は理解しているのかもしれませんが、金額として報酬がほとんどぶっ飛ぶほど取られているということまではクライアントは知りません。
紹介サイト中に、「紹介された税理士から○○円あっせん料を頂戴しております。」ということまできちんと明示されていれば、クライアントも、自分の払った報酬がどれだけ紹介業者に回っているかを知ることができるはずですが、そんなディスクロージャーはみたことがありません。
税理士の方も、おそらく見積書に紹介会社に対するあっせん料を支払うなどということはしていないはずなので自分の払った報酬がどれだけ紹介業者に回っているかを知ることができません。

この様な不当誘致の問題が横行しているのに、税理士会が不問に付しているのかがまったく理解不能です。
税理士会の上層部が紹介会社からマージンをもらっているのかと疑いたくなってしまいます。

新興宗教っぽいか否かの判断

税理士のとある団体に去年7月に入会しましたが、6カ月で退会しました。
映画の題材にもなったカリスマ税理士が税理士の運命打開を目指して設立した組織であり、他のベンダーとは一線を画していると思ったことと、他のベンダーよりは色々と高いけれど、税理士も高度IT化が必要なので、システムにお金を掛けるべきだと判断したためです。

しかし、実際に入会してみると私が目指す道とは違っていました。

  • 企業防衛(生命保険を売ること)を数値目標にしている。
  • とにかく自計化(記帳代行せず自分で記帳させる)が正義だと主張する。
  • 巡回監査は全部監査だと主張する。
  • なかなかクラウド会計を導入しない(導入したがなぜか一番高いクラスにしか導入しない)。
  • 一部の常に登壇しているような会員(バッチ会員?)は調子が良さそうだが、その他の会員の中にはシステム利用料の支払いが大変だと嘆いている人もいた。

全国会がバイクの前輪で、株式会社がバイクの後輪だという話をよく聞かされましたが、おそらくバイクの前輪が大御所税理士ばかりで、ユーザーのニーズを捉えきれていないのだと感じられます。
新興宗教の最大の特徴は、「信じる者は救われる」と自分で言ってしまうところだと思います。
信じるに値するものは、わざわざ「信じる者は救われる」と言われなくても信じられるものです。
わざわざ自分から「信じてください」というような人は信じる必要はありません。
自分が理解し納得できたものだけを選択できることが独立の醍醐味であるはずなのに、「信じる者は救われる」と洗脳されて、わざわざ不合理な選択をしてしまうというのは非常に愚かなことです。
リーガロイヤル東京で入会者全員に対して行われる入会セミナーから「この会には“ハイ”か“イエス”しかない」と言われました。とにかく団体の先輩税理士の言われたことを信じて実行すれば必ず成功するとのことでした。まさに、「信じる者は救われる」の世界です。

また、「自利利他」という仏教用語(?)も売りにしています。分かりやすくいうと「情けは人の為ならず」というような意味だと思います。しかし、この団体では、「企業防衛(生命保険を売ること)や自計化のような自分が一見クライアントに嫌がられそうで勧めたくないと感じるようなことでも、クライアントにとっては良いこと(利他)なのだから、勧めることが結果的には自分の利益(自利)になるのですよ」と言いたいようです。「クライアントに勧めたくない(自利)から勧めない」ということでは、自分の勘定を優先的に考えていることであり、クライアントのため(利他)に反するから、自分の成功には繋がらないという論法です。

その時点でかなり違和感を感じていましたが、「ニューメンバーズフォーラム」という入会3年目までの会員対象の1泊2日のフォーラムはとても役に立つ集会だから出たほうが良いと説明され、会費1万円を支払って出席したら、やっぱり「この会には“ハイ”か“イエス”しかない」と言われ、いつもの企業防衛(生命保険を売ること)の話や自計化を進めろという話、最近流行のクラウド会計システムはチェック機能がぜい弱で危険だという話など、いつもと同じ、夜の飲み会でも同じ話で、会の宣伝を聴くためにわざわざお金を払ったような結果になりました。最後は、「成功をつかみ取れ!」とみんなで合唱して締めくくられました。

この団体の税理士はよく、巡回監査は全部監査であり、部分監査である公認会計士監査より勝っているという話をされましたが、それは大きな間違いです。

公認会計士監査もその昔は全部監査を行っていましたが、その結果網羅性(すべての取引が会計情報に反映されていること)の欠陥等の会計不祥事を見破ることができない事例が多発しました。そして、ヒアリングにより企業の全体的な状況を把握し、その内容をふまえて、リスクアプローチによりリスクが高い部分に焦点を当てて部分監査を行うようになったのです。

金融商品取引法や会社法等の法的に義務付けられた監査においてさえ、リスクアプローチによる効果的かつ効率的な監査が要請されているにもかかわらず、クライアントの自主的な要望に応じて実施する税理士の巡回監査について、一律に全部監査を実施すべきとすることは、クライアントに余計な作業の対価を支払わせていることになるわけです。

私は、最小限のコストで本当に必要なものだけをクライアントに提供したいという当たり前のことを考えを持ち、当たり前に思えることを実行する方が、精神衛生上も楽で最大限の力を発揮できると思い団体を退会しました。

自利利他」という言葉を敢えて借りるとするなら、「自利」(自分の満足感)も大事にしないと「利他」を生み出すこともできないと考えたわけです。

税理士に限らず、社長様、事業主様におかれましても、「信じる者は救われる」という人にはごまかされず、自分の感性を信じて、自分が自然に受け入れられるものを取り入れて頂ければと思います。