協会けんぽと土建国保

国交省では現在、建設業許可業者に対し、社会保険の100%加入を目指す取り組みを行っています。

社会保険未加入政策に取り組む理由の一つは、深刻な若年層の建設業離れに歯止めをかけ、人材を確保するためです。

「許可・更新時の確認・指導」「立ち入り検査」「経営事項審査」や「指名競争入札」の際に保険の確認がされているようです。

1.医療保険制度

国の医療保険制度には、国民健康保険、健康保険、共済組合、後期高齢者医療制度等があります。協会けんぽと建設国保は、どの保険制度に該当するのでしょうか?

A.健康保険協会けんぽ(旧政府管掌)・組合管掌

B.国民健康保険-市町村管掌・国民健康保険組合管掌(建設国保等)

2.加入資格

協会けんぽ-従業員5人以上の個人事業所や法人は、加入が義務付けられています。すでに建設国保に加入している被保険者については「健康保険の適用除外」の承認を受けることで、継続して建設国保に加入することもできます。

建設国保-建設業に携わっている方で、原則、従業員が常時5人未満の個人事業所や一人親方の方が加入できます。

3.保険料と給付

協会けんぽ-保険料は、事業主と被保険者が折半で負担します。(任意継続被保険者を除く)保険料の額は、被保険者の標準報酬月額及び標準賞与額に保険料率(一般保険料率+介護保険料率)をかけた額となります。保険料率は都道府県ごとに異なります。扶養家族に対する保険料は不要です。

建設国保-保険料は区分ごとの定額制です。被保険者の保険料分に対する事業主負担はありません。建設国保も国民健康保険なので、市町村の国保と同様に、被保険者が保険料を全額負担することになります。事業主(会社)側にとってはその分経費節減になります。被保険者の世帯の保険料額は、組合員の仕事の形態、年齢、家族の人数に応じた額となるため、扶養している家族が多ければ、保険料も上がります。

ここでは一例として、40歳未満で月24万円の従業員(介護保険料非該当)のケースを見てみます。※平成29年3月分以降の保険料率(東京都)

保険料負担面 所得保障面(病気で入院)
会社 従業員 会社 従業員
健康保険
(協会けんぽ)
に加入した場合
11,892円/月
※従業員全員分の
半額を会社が負担
11,892円/月 5,333円/日
※最大1年6か月
建設国保の場合
(例:東京土建)
0円/月 18,400円~/月
※年齢・扶養数等
によって変動
4,400円/日
※最大180日

4.まとめ

会社負担と従業員負担とで分けて考えてしまうと、会社側にとっては建設国保の方が負担が少ないというメリットがあり、従業員側にとっては協会けんぽの方が負担が少ないというメリットがあると言えます。しかし、保険料も給料も会社にとっての同様のコストであると考え、従業員の保険料負担分を給料で補てんすれば、会社負担と従業員負担のトータル保険料が少なくなる方が良いという考え方も可能です。その場合、下記のマトリックスも参考にしていただければと思います。

扶養家族 給与
協会けんぽ 変動しない 変動する
建設国保 変動する 変動しない

 

また、建設国保の場合、支部により異なりますが、毎月支部に組合費・保険料を支払いに出向かなければならなかったり、集金係をするように頼まれたりとかという煩わしさがある一方、社会保険関係の手続きを代行してくれたりとか、アドバイスが受けられたりもするので心強いとも言えます。支部の方針を情報収集しておくことも重要といえます。

なお、建設国保等の組合国保を選択する場合には、社会保険の加入義務が生じる前から組合国保に加入していることにより、継続加入という選択が可能になるため、個人事業主の場合は従業員が5人以上になる前に、会社の場合は設立前に組合国保に忘れずに加入しましょう。